最少の実験回数で高い予測精度を与える汎用的AI技術を開発 ~材料開発のDX:NIMS、旭化成、三菱ケミカル、三井化学、住友化学の水平連携で実現~
2021年10月25日
国立研究開発法人物質・材料研究機構
旭化成株式会社
三菱ケミカル株式会社
三井化学株式会社
住友化学株式会社
概要
国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)、旭化成株式会社、三菱ケミカル株式会社、三井化学株式会社、住友化学株式会社は、化学マテリアルズオープンプラットフォーム(化学MOP)からなる水平連携において、強度や脆さといった材料物性を機械学習で予測する際に、材料の構造から得られる情報を有効に活用し、少ない実験回数で、予測値と実値の誤差を小さくできる(予測精度の高い)AI技術を開発しました。高分子材料をはじめとした材料開発の強力なツールになると期待されます。
これまでのマテリアルズ・インフォマティクス研究は、材料組成や加工プロセス(温度や圧力など)のパラメータから材料物性を機械学習で予測することで、材料開発を加速してきました。一方で、プロセス加工後の構造が材料物性に強く影響する場合、高い予測精度を実現するためには、構造情報を提供するX線回折(XRD)や示差走査熱量測定(DSC)等の測定データの利用が有効です。しかし、これらの測定データは、プロセス加工した材料に対して測定しないと取得できません。したがって、構造情報を利用して予測精度を向上させるには、研究者が設定可能な材料組成といったパラメータと、実測でしか得られないパラメータの異なる2つのパラメータを扱う必要があります。
本研究では、XRDやDSC等の実測でしか得られないデータを用い、なるべく少ない材料作製回数で正確に材料物性が予測できるように、作製すべき材料を適切に選定するAI技術を開発しました。作製すべき材料をベイズ最適化などの手法で選定し、測定したデータを加えて、AIによる材料選定を繰り返します。本技術の有用性を示すための一例として、高分子材料であるポリオレフィンのデータベースを利用しました。その結果、AI技術の利用により、無作為に材料作製を進める場合と比べて、作製回数を少なくしても機械学習による材料物性の予測精度を向上できることを示しました。
本技術を利用して精度の高い予測が実現できると、材料の「構造」と「物性」の関係が明らかになり、物性の発現起源の明確化・材料開発指針の決定が可能となります。また、この技術はポリオレフィンといった高分子材料だけでなく様々な材料開発にも応用できる汎用的技術です。そのため、材料開発のDX基盤技術になると期待しています。
本研究は、NIMS 田村亮主任研究員、中西尚志グループリーダー 、出村雅彦部門長、旭化成株式会社 武井祐樹主幹研究員、三菱ケミカル株式会社 今井真一郎主席研究員、三井化学株式会社 中原真希研究員、住友化学株式会社 柴田悟史研究員によって実施されました。
本研究成果は、Science and Technology of Advanced Materials: Methods誌に、2021年9月28日 (日本時間)にオンライン掲載されました。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/27660400.2021.1963641
本件に関するお問い合わせ先
-
国立研究開発法人物質・材料研究機構 経営企画部門 広報室
TEL: 029-859-2026
Email:pressrelease@ml.nims.go.jp
-
旭化成株式会社 広報部 報道室
TEL:03-6699-3008
-
三菱ケミカル株式会社 広報本部
TEL:03-6748-7161
-
三井化学株式会社 コーポレートコミュニケーション部 広報G
TEL:03-6253-2100
-
住友化学株式会社 コーポレートコミュニケーション部
TEL:03-5543-5102