2023年度
住友化学 2023(2023年7月31日発行)
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有機ELディスプレイは高速応答、薄型などの特長から、テレビやスマートフォン等に用いられ、市場に多く出回るようになった。現在は多数の真空装置を用いた製造方法が主流であるため、製造コスト低減余地が大きい塗布型有機ELが大きく期待されている。当社は塗布型有機ELの材料開発に取り組み、世界に先駆けて実用化を達成した。本稿では、塗布型有機ELの材料技術、デバイス技術を概観しながら、当社が開発製造する高分子型有機EL材料の特長と技術を紹介する。
( page 4~17 by 山内 掌吾、蓬台 俊宏 )
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複数の相が混じりあう流体では、相を区分ける界面が空間を自在に移動する問題を解く必要がある。その解法として、Volume-of-Fluid(VOF)法とLevel Set(LS)法を概説する。また、VOF法とLS法のカップリング法を紹介したのち、近年著者らが開発した計算負荷を抑えた高速かつ高精度な手法を説明する。最後に上記で解説した計算手法がさまざまな流体現象を可視化し、理解に貢献できることを実証する。
( page 18~25 by 島田 直樹、内橋 祐介、八重樫 優太 )
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ピリダクロメチルは住友化学株式会社が見いだした新規な作用機作の殺菌剤である。本剤は糸状菌のチューブリンに結合して殺菌作用を示し、かつ標的部位は既存のチューブリン重合阻害剤とは異なるため、交差耐性を示さない。現在問題となっている既存殺菌剤(DMI、QoI、SDHIなど)の耐性菌にも有効である。本剤は、テンサイ褐斑病、ダイズ紫斑病、各種うどんこ病等に対し高い防除効果を示す。本剤は2023年に日本で農薬登録される見込みである。
( page 26~37 by 倉橋 真、松崎 雄一、真鍋 明夫、川村 真人、岩橋 福松、山根 三慶、松山 良子、半田 木綿子)
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植物保護製品指令91/414/EECおよびバイオサイド製品指令98/8/ECが植物保護製品規則1107/2009およびバイオサイド製品規則528/2012に置き換えられてから、活性物質がヒトや非標的生物に悪影響を及ぼし得る内分泌攪乱性を有する場合にはその活性物質は原則として承認できなくなった。しかしながら新しい科学的判断基準が設定され、適用されたのは2018年であった。本稿では、植物保護製品/バイオサイド製品規則下で内分泌攪乱性のデータ要求、暫定的基準の規定、科学的判断基準と科学的判断基準適用後の評価手続きなどについて概説する。
( page 38〜61 by 原田 浩子、龍 みを、山根 慶子、藪下 晴津子、松下 秀則、小高 理香、太田 美佳 )
バックナンバー
バックナンバー(抄録のみ)
※1999年度以前は論文の抄録のみを掲載しています。