技術誌 住友化学

2020年度

住友化学 2020(2020年7月31日発行)

インピルフルキサムは住友化学(株)が開発したコハク酸脱水素酵素を阻害する新規殺菌剤(SDHI剤)である。本化合物はダイズさび病をはじめ、リンゴ黒星病など各種作物の重要病害に対し幅広く活性を示す。また、予防効果、治療効果、浸達性等の効力特性にも優れ、さまざまな防除場面で高い実用性を示す。人畜および環境に対しての安全性も高い。本剤は、国内ではカナメ®フロアブルとして2020年に販売を開始したほか、ブラジル、アルゼンチン、米国、カナダ、EU諸国、韓国などでも開発が進んでいる。
( page 4~16 by 渡邊 智史、松崎 雄一、阪口 裕史、岩橋 福松、川中 秀夫、松永 忠史、近藤 美和、田淵 美穂 )

純度99.99%(4N)以上のアルミナは高純度アルミナに分類され、いくつかの製造方法で工業化されている。中でも当社の高純度アルミナは、アルミニウムアルコキシドの加水分解法で製造されており、1981年の技術確立以来、お客様のニーズに応えるべくさまざまな製品開発を行い、事業を拡大してきた。本稿では高純度アルミナの特徴と、将来の用途に向けた新規グレードの開発状況について述べる。
( page 17~25 by 坂元 俊介、梶野 哲平、奈須 義総、榊 祥太、酒谷 能彰 )

ブロナンセリンはドパミンD2、D3およびセロトニン5-HT2A受容体に高い親和性、選択性を示す非定型抗精神病薬である。ブロナンセリンの経皮吸収型製剤であるロナセンテープは、統合失調症の適応を有する世界で初の薬剤である。ここに、開発に至った経緯、製剤設計および臨床試験成績について報告する。
( page 26~35 by 佐々木 泉、田中 雅康 )

窒化ガリウム(GaN)は材料の持つ高いポテンシャルから、発光デバイスだけでなく、高周波デバイスやパワーデバイス分野への応用が期待されているが、一方で化学的に非常に安定であることから、これまでウェットエッチング技術が確立されておらず、デバイスの作製プロセスに制約が多くあった。我々は、GaNの光電気化学エッチング技術に着目し、これを工業的に利用可能とする、簡便で制御性の高いエッチング技術の開発に取り組んできたので報告する。
( page 36~45 by 堀切 文正、福原 昇、柴田 真佐知 )

最初のMRL指令が1976年に公表されたにも関わらず、2008年9月1日までは欧州共同体の農薬の残留基準値が設定されていたのは限定数の農薬のみで、各国MRLが異なる数値で設定された農薬や、MRLが設定されないままの農薬も存在した。2008年9月1日までは4つの異なるMRL指令が存在したが、これらが2005年公表されたMRL規則で置き換えられた。このMRL規則はMRL指令に掲載されたMRLを取りまとめただけでなく、MRL指令では規定のなかった手順や存在しなかった附属書を設定した。本稿では、MRL規則により導入された規定とMRL設定/変更の手順の変遷について概説する。
( page 46~58 by 原田 浩子、龍 みを、太田 美佳 )

バックナンバー

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