技術誌 住友化学

2022年度

住友化学 2022(2022年7月31日発行)

近年、世界中で持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、多くの取り組みが議論され、実施されている。SDGsの17の目標のうち、エネルギーおよび気候変動問題の解決に対しては、化石燃料を用いない電気自動車(EV)の普及が必須である。
当社製品であるリチウムイオン電池用アラミド塗工セパレータ(ACS:Aramid Coated Separator, 製品名:ペルヴィオ)はEV用電池にも利用されており、安全性を改善できる可能性がある。本稿では電池内における当社製ACSの特長や機能について報告する。
( page 4~14 by有瀬 一郎、大関 朋彰、宮原 雄人、宮崎 晃平、安部 武志 )

1954年にG. Nattaらがポリプロピレン(PP)の合成に成功して以来、PPの製造において、プロセスの大幅な改良・簡素化とともに、触媒の高性能化が継続的に行われてきた。重合活性の飛躍的な向上やPPの1次構造制御に、触媒成分あるいは第3成分として用いるドナーが果たす役割は非常に大きい。本稿ではプロピレン重合触媒の変遷と現状を解説するにあたり、ドナーの探索・開発動向に焦点を置いて紹介する。
( page 15~25 by長谷川 正行 )

低分子化合物の構造最適化と最新の製剤技術の組み合わせによって、最適な安全性と有効性プロファイルを有するワクチンアジュバントの合理的なデザインが可能となる。我々は、これまでのTLR7作動薬に係る非臨床および臨床研究を通して得たノウハウを活かし、新規TLR7ワクチンアジュバントであるDSP-0546EおよびDSP-0546LPを見いだすことに成功した。さらに、Reverse Vaccinology 2.0等の最新のワクチン学的アプローチを活用して設計された有望な抗原と組み合わせることによって、ユニバーサルインフルエンザワクチンならびにマラリアワクチン候補を開発している。
新しい画期的なアジュバント技術を用いたコラボレーティブ・イノベーションを通じて、次世代ワクチンの研究開発を推進し、パンデミックへの備えとグローバルヘルスに貢献したい。
( page 26~34 by 福島 晃久)

化学プロセスの適切な運転条件や異常時の緊急措置を検討するためには、取り扱い物質の熱分解反応に関する正確な反応速度パラメータを得ることが重要である。ARC測定データから化学物質の分解速度を評価できるが、一部の物質では、反応速度解析が不適切と判断される場合がある。例えば、融解潜熱が発熱速度に影響を与える物質やARCの断熱制御能力を超えた急激な発熱挙動がある物質である。本稿では、ARC測定で反応速度解析が不適切と判断される物質に対して、密封セルDSCやC80測定データを用いたFriedman法(モデルフリー反応速度解析)を適用した事例を紹介する。
( page 35~44 by 伊藤 遼太朗 )

活性物質の承認申請には最低一つの製品の申請書が必須なため、植物保護製品指令91/414/EEC下でもバイオサイド製品指令98/8/EC下でも製品に含有される補助成分/不活性物質の情報が要求された。これは植物保護製品規則1107/2009下およびバイオサイド製品規則528/2012下でも同様である。本稿では、植物保護製品/バイオサイド製品に含有される補助成分/不活性物質の要求情報と補助成分/不活性物質が有する懸念事項が製品認可に及ぼす影響などについて概説する。
( page 45~56 by 原田 浩子、龍 みを、太田 美佳 )

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