スミカエクセルPESの成形収縮率は非強化品で0.6%と小さく、かつ異方性がありません。ガラス繊維強化グレードはMD方向0.2%、TD方向0.4%と異方性を有します。
図3-3-1 成形収縮率の比較
スミカエクセルPESは線膨脹係数が小さく、その温度依存性が小さいことが特徴です。図3-3-2に線膨脹係数の温度依存性を示します。結晶性のPPS-GF40%は温度上昇と共に線膨脹係数が大きくなりますが、非晶性のスミカエクセルPESは、温度に依存せず200℃まで一定の値を示します。さらにガラス繊維強化の4101GL30は2.0×10-5(/℃)とアルミニウム並の低い線膨脹係数を有することから、精密成形に適した材料といえます。
図3-3-2 線膨脹係数の温度依存性
スミカエクセルPESを含む熱可塑性樹脂は、固体や溶融状態に関わらず圧力に依存して比容積が変化します。この樹脂の圧縮性は、圧力(Pressure)、比容積(Specific Volume)および温度(Temperature)の関係(PVT特性)として表されます。PPSは結晶性樹脂であるため、結晶化に伴う体積収縮は大きいですが、PESは非晶性樹脂であるため、体積収縮が小さく、寸法精度や反りに優れます。
図3-3-3 PPS-GF30%のPVT特性
図3-3-4 4101GL30のPVT特性
スミカエクセルPESは吸水性がありますが、成形直後の部品の吸湿による寸法変化は飽和状態(1.1%)で0.15%と小さな値です。
図3-3-5 寸法変化の吸水率依存性
図3-3-6 スミカエクセルPESの吸水曲線