スミカエクセル PESの溶着

スミカエクセルPESは非晶性樹脂であるため、スミカエクセル同士の溶着は種々の方法で比較的簡単に行うことができます。スミカエクセルPESの溶着に用いることができる代表的な溶着方法と特徴を表5-2-1に示します。溶着方法により特徴が異なるため、製品の大きさや形状、製品に求められる特性、経済性(装置価格やサイクルなど)を考慮して選択する必要があります。

表5-2-1 スミカエクセルPESの溶着

溶着方法 熱板溶着 超音波溶着 振動溶着 レーザー溶着 IR溶着 CVT(IR+振動溶着)
溶着性 溶着強度
溶着部の外観
溶着可能な樹脂 熱可塑性樹脂 熱可塑性樹脂 熱可塑性樹脂 光透過性樹脂
光吸収性樹脂
熱可塑性樹脂 熱可塑性樹脂
溶着時間 10~30sec 0.1~5sec 2~10sec 2~15sec 10~30sec 5~30sec
溶着可能なサイズ ヒータサイズ依存 名刺大サイズ パレットサイズ A3サイズ程度 インパネサイズ インパネサイズ
デザイン 製品形状制限 ヒータ形状に制限 基本的にフラット ある程度の3次元形状 自由度高い 振動溶着より優れる 自由度高い
溶着部デザイン 専用デザイン 専用デザイン 専用デザイン 専用デザイン 専用デザイン 専用デザイン

※PESの軟化温度が高いため溶着しない場合あり

スミカエクセルPESは非晶性の樹脂であるため、スミカエクセルPES同士の超音波溶着は比較的簡単に行うことができます。溶着の組み合わせは以下の3通りが考えられます。

  1. 非強化グレード同士
  2. 非強化グレードと繊維強化グレード
  3. 繊維強化グレード同士

1が最も容易で、かつ溶着強度も大きくなります。しかしながら2、3のケースでも十分な溶着強度を示し、結晶性の樹脂(例えばPPS)に比べて溶着性は優れています。
超音波溶着の条件は、ホーン出力、製品形状、溶着面積およびグレード等により変化しますが、標準的な条件は以下のとおりです。

表5-3-1 超音波溶着の標準条件

圧力(MPa) 30~60
振幅(μm) 50~80
溶着時間(sec.) 0.1~2.0

超音波溶着後のせん断強度の測定結果を以下に示します。試験方法および試験片は以下のとおりです。

超音波ウエルダー
SONOPET-1200B(精電舎電子工業株式会社)

公称出力: 1200W
発振周波数: 19.5kHz
加圧力: 18N
振幅: 34μm

図5-3-1 溶着部せん断強度測定用試験片

図5-3-1 溶着部せん断強度測定用試験片

表5-3-2 溶着部破壊時の最大荷重(引張せん断試験)

(単位:N)

  発振時間(sec.)
0.1 0.2 0.3
3600G 680 700 溶着部以外で破断
3601GL20 660 850 溶着部以外で破断
3601GL30 740 830 溶着部以外で破断

レーザー溶着とは、レーザー光を照射し、対象との境界面に熱を発生させて溶着する工法です。レーザーによる樹脂溶着では「光透過性樹脂(厚さ0.5mm)」と「光吸収性樹脂(厚さ0.8mm)」とを組み合わせます。スミカエクセルPESは光線透過率が優れますので、レーザー溶着が可能です。

図5-4-1 レーザー溶着の試験条件

図5-4-1 レーザー溶着の試験条件

表5-4-1 レーザー溶着強度

グレード レーザー条件(Φ0.6) 溶着強度
(MPa)
光透過性樹脂
(厚さ0.5mm)
光吸収性樹脂
(厚さ0.8mm)
出力
(W)
移動速度
(mm/s)
4100G 4100G B 3 10 30
15 33
20 34
3601GL20 3601GL20 B 3 10 38
15 37
20 37