射出成形機の選定
スミカエクセルPESは、通常のインラインタイプの射出成形機やプランジャー(プリプラ)タイプの射出成形機で成形することが可能です。
スクリュ、シリンダ
- スミカエクセルPESのフィラー強化グレードは、ガラス繊維などを充填しているため、耐摩耗仕様の材質を推奨します。
- スクリュデザインは、せん断発熱量が少ない標準的なフルフライトタイプが適します。サブフライト付きスクリュや高混練スクリュの使用は、樹脂の滞留やせん断発熱により樹脂温度が400℃以上になることがあるため好ましくありません。
以下に代表的なスクリュデザインを示します。
- L/Dスクリュの長さ(L)/スクリュの径(D)=20前後
- 圧縮比=2~2.2前後
- 各ゾーン
供給ゾーン:55%前後
圧縮ゾーン:25%前後
計量ゾーン:20%前後
- スクリュヘッドは、逆流防止機構付きスクリュヘッドを推奨します。
ノズル
- 材質は、スクリュ、シリンダに準じます。
- オープンタイプのノズルの使用が適しています。シャットオフノズルは、デッドスペースが多く樹脂が滞留しやすいので好ましくありません。
- ノズルヒーターは、独立した温度制御器を使用し、制御性が良好なPID制御方式を推奨します。
射出ユニットおよび制御系
- スミカエクセルPESは溶融粘度が高いため、最大射出圧力が200MPa以上の成形機を推奨します。
- スミカエクセルPESは溶融粘度が高く、計量時のトルクが大きくなりやすいことから、高出力タイプの可塑化装置を有する射出成形機を推奨します。
成形機容量
- 製品の大きさにもよりますが、計量値が全射出容量の1/3~3/4となるようなシリンダ径と型締め力の組み合わせを推奨します。計量値が小さいと、無用な樹脂滞留から種々の成形不良が発生する可能性が高くなるため注意してください。
金型設計
スミカエクセルPESは溶融粘度が高く、成形収縮率が小さいため、金型の設計にあたっては以下の点に留意してください。
金型材質
- 試作および小ロットの成形に対しては、機械構造用炭素鋼(S55C)が使用できますが、摺動部を有する場合には焼き入れを推奨します。
- 量産および高寸法精度が要求される場合には、より強靱なクロムモリブデン鋼(SCM435、SCM440)、合金工具鋼(SKD11、SKD61)の使用を推奨します。
- 上記以外の材質をご使用される場合は、事前に問題が無いか十分にご検討ください。(金型材質としてCu系アロイ等は推奨できません。)
スプル
- 長さはできるだけ短く、テーパーは大きく(~5°)とることを推奨します。
- スプル抜けを良くするため、図に示すようなスプルロックを設けることが望まれます。
図4-3-1 スプル形状
ランナ
- 可能な限り太く短くし、流動性を考慮して決定してください。
- 断面形状は、円形もしくは台形を推奨します。
- ゲートバランスを取ることが重要です。
図4-3-2 ランナ形状
ランナ断面寸法例(mm)
A |
B |
C |
D |
E |
>4 |
>3 |
>3 |
>4 |
D/2 |
ゲートシステム
サイドゲート
- 矩形ゲートは、ランド長さを短く、深さを深くすると効率的です。ゲート深さは成形品肉厚×0.7を目安とし、ランド長さは1mm以下を推奨します。
図4-3-3 サイドゲート形状
ピンポイント/サブマリンゲート
- ゲート径は0.8~1.2mmφ、ランド長さは1mm以下を推奨します。また流動距離が長くなる場合は、ゲート径を大きくするよりも多点ゲートを推奨します。
図4-3-4 ピンポイント/サブマリンゲート形状
フィルムゲート
- ゲートの厚みは成形品肉厚×0.5が好ましく、ランド長さは1mm以下が好適です。
図4-3-5 フィルムゲート形状
抜きテーパー
- スミカエクセルPESは成形収縮率が小さいため、浅いものでも1°(1/60)~2°(1/30)の抜きテーパーをとることが必要です。深いものはより大きくとることを推奨します。
- 薄肉成形品は過充填になりやすいため、抜きテーパーを大きめにとることを推奨します。
- ガラス繊維強化グレードも抜きテーパーを大きめにとることを推奨します。
- 製品の形状により、十分な抜きテーパーが取れない場合は、スライドコア、突出し方式を工夫する必要があります。
エアベント(ガス抜き)
- スミカエクセルPESは、1/100~5/100mm程度のエアベントが好適です。スミカエクセルPESは溶融粘度が高いことから、5/100mmのエアベントを設置してもバリは発生しにくいです。
- 薄肉成形品ではエアベントの設置が必要です。