スミカスーパー™ LCPの溶着

LCPの溶着

スミカスーパーLCPは耐久性や溶着強度の観点から、溶着による接合法が多く用いられており、中でも熱板溶着法、振動溶着法、超音波溶着法が代表的です。近年ではレーザー光を利用したレーザー溶着法も普及しています。
スミカスーパーLCPの溶着においては、溶着時の樹脂温度やせん断(振動)などの条件が非常に重要です。スミカスーパーLCPの溶着には、下表のような超音波溶着やCVT(IR+振動溶着)が適しています。

表5-1-1 スミカスーパーLCPの代表的な溶着方法

溶着方法 熱板溶着 超音波溶着 振動溶着 レーザー溶着 IR溶着 CVT溶着
(IR+振動溶着)
スミカスーパーLCPへの適用 ×
融点が
高いため
溶融しない
×
融点が
高いため
溶融しない
△~×
製品が厚いと
レーザーが
透過しない
溶着性 溶着強度 適合範囲
限られる
○(小物は◎)
溶着部の外観
溶着可能な樹脂 熱可塑性
樹脂
熱可塑性
樹脂
熱可塑性
樹脂
透明樹脂
吸収樹脂
熱可塑性
樹脂
熱可塑性
樹脂
溶着時間 ×× 0.1 ~ 5sec 2 ~ 10sec 2 ~ 15sec 10 ~ 30sec 5 ~ 30sec
溶着可能なサイズ ヒータサイズ
依存
名刺大サイズ パレットサイズ テールレンズ
程度
インパネサイズ インパネサイズ
デザイン 製品形状制限 ヒータ形状に
制限
基本的に
フラット
3次元形状 自由度高い 振動溶着より
優れる
自由度高い
溶着部デザイン 専用デザイン 専用デザイン 専用デザイン 専用デザイン 専用デザイン 専用デザイン

超音波による溶着

超音波溶着(Ultrasonic welding)は、超音波(20~40kHz)を利用して接合面を摩擦発熱により溶融して接合する方法です。スミカスーパーLCPの各グレードは超音波加振による溶着が可能です。接着面の強度は250℃で1時間の熱エージングを行なった後もほとんど変化ありません。

せん断強度の試験方法

  • 図5-2-1 超音波溶着の試験方法

    図5-2-1 超音波溶着の試験方法

    単位:mm

試験条件は下記の通りです。

  • 試験片
    12.7×78×1.6mm 試験片2枚
    (一方の試験片は、右図に示す突起を有する)
  • 溶着方法
    右図のように試験片をセットした後、周波数19.5kHz、振幅34μm、荷重176.4Nの条件下で0.6~0.8秒加振
  • せん断強度の測定
    引張速度1.67×10-4m/sでせん断強度を測定する。

表5-2-1 超音波ウエルダーによる溶着性(単位:N)

  せん断強度(N)
溶着後 250℃,1hr
熱エージング
E5008L 650 570
E5008 510 400
E4008 460 460
E6008 740 740
E6006L 710 650

赤外線(IR)溶着

赤外線(IR)溶着とは、非接触でプラスチック部品を加熱して接合する新技術です。赤外線を接合部のみに照射するため、他の部位には熱の影響が出ず、きれいな仕上がりが得られます。振動を利用する超音波溶着や、振動溶着では傷の発生が問題になる場合がありますが、赤外線溶着は非接触加熱を行うため、傷が発生しません。スミカスーパーLCPは赤外線溶着が可能です。

図5-3-1 スミカスーパーLCPのIR溶着の試験方法

図5-3-1 スミカスーパーLCPのIR溶着の試験方法

表5-3-1 スミカスーパーLCPのIR接着強度

IR照射時間(s) 加圧(MPa) 溶け込み量(mm) 溶着強度(MPa)
40 1.5 1.2 13.2
50 1.5 1.5 12.8
50 3 1.8 13.1

CVT(IR+振動)溶着

スミカスーパーLCPは振動溶着では十分な発熱が得られず溶着できませんが、事前にIRで加熱した後に振動溶着すると、溶着が可能になります。超音波溶着に比べて大型の成形品に対応が可能です。また、溶着強度を上げたい場合は、CVT(IR+振動)溶着を推奨します。

図5-4-1 スミカスーパーLCPのCVT溶着の試験方法

図5-4-1 スミカスーパーLCPのCVT溶着の試験方法

図5-4-2 スミカスーパーLCPのCVT接着強度

図5-4-2 スミカスーパーLCPのCVT接着強度

レーザー溶着

レーザー溶着とは、レーザー光を照射し、対象との境界面に熱を発生させて溶着する工法です。レーザーによる樹脂溶着では「光透過性樹脂」と「光吸収性樹脂」とを組み合わせます。スミカスーパーLCPはレーザー溶着が可能ですが、下記の点に注意してください。

<透過側材料>
スミカスーパーLCPはフィラーを高充填しているためレーザー(赤外線)の透過率が低いので、成形品の厚みを薄くする必要があります。レーザー溶着が可能な成形品の厚みは0.3mm以下です(0.3mm以上については当社担当にご相談ください)。赤外線の透過率が10~30%と低いため、条件範囲は狭くなります。レーザー溶着可能なLCPとしては、充填材の量が少ないグレードが適しており、ガラス繊維のみを適用したグレードが好適です。また、無機充填材を添加したグレードは、透過率が低くなりますのであまり適していません。

<吸収側材料>
透過側材料と同一の黒グレードを使用してください。

図5-5-1 スミカスーパーLCPのレーザー溶着の試験方法

図5-5-1 スミカスーパーLCPのレーザー溶着の試験方法

表5-5-1 スミカスーパーLCPのレーザー溶着強度

透過側 吸収側 ガラス板 溶着強度(MPa)
グレード 試験片厚み グレード 試験片厚み
E6008 0.3mm E6008 B 0.5mm 不使用 8.6
E6008 0.3mm E6008 B 0.5mm 使用 10.2
E4008 0.3mm E4008 B 0.5mm 不使用 10.1
E6007LHF 0.3mm E4008 B 0.5mm 不使用 15.6