スミカスーパーLCPは、エンジニアリングプラスチック(以下、エンプラ)の中では最高レベルの耐熱性を有する液晶性全芳香族ポリエステル(Thermotropic Liquid Crystalline Polyester)で、下記の基本骨格を有しています。一般に知られている液晶ポリマー(以下、LCP)の一種です。
図1-1-1 スミカスーパーLCPのスキンコア構造および写真
図1-1-2 スミカスーパーLCPの代表的な化学構造
LCPはその名前が示すとおり、溶融状態で液晶となることが特徴です。そのため、通常のポリマーではみられない特異な現象、つまり偏光顕微鏡下で温度をかけると溶融時の透過光量の大幅な増加が観察されます。
図1-1-3 溶融液晶観察装置
図1-1-4 温度と透過光量との関係(偏光顕微鏡観測)
図1-1-5 スミカスーパーLCPの偏光顕微鏡写真
スミカスーパーLCPは液晶化温度以上で液晶化状態(結晶状態)を示します。射出成形により、液晶分子が配向し、高強度、高弾性率、高流動特性、低線膨張係数などの液晶化に由来した特徴を示します。
図1-1-6 スミカスーパーLCPの構造
スミカスーパーLCPは液晶性全芳香族ポリエステルであるため、液晶性に基づく性質と全芳香族性に基づく性質の両性質を備えています。
表1-1-1 液晶性全芳香族ポリエステルの特徴
液晶性に基づく特性 → 分子配向の効果 | 全芳香族性に基づく特性 | |
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長所 | 短所 | |
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