マルチファンクションプリンター(MFP)とレーザービームプリンター(LBP)の定着部は、紙上に転写した粉状のトナーを高温と圧力で紙上に融着(定着)させる方式が一般的となっています。樹脂製の部品として「定着部の部品」と「定着部周辺の部品」の2種類に大きく分類されます。
「定着部の部品」は、200~350℃の高温の熱源を支持する部品や、熱源に近接した位置で使用する部品となります。「定着部周辺の部品」は、定着前後の紙を搬送する部品や定着部全体を覆うカバー類となります。
「定着部の部品」は、定着方式によって必要な耐熱温度が異なるため、材料としては適切な耐熱性を有するグレードが求められます。定着部の熱源を支持する部品に対しては、熱効率性の観点から蓄熱性が必要となります。また、高速回転するフィルムと直接接する部品に対しては、摺動特性が必要になります。
一方、紙を搬送する為のガイドや、定着部全体を覆うカバー類などの「定着部周辺の部品」には、紙詰まりを防止する目的や、定着時の圧力を長手方向全体で一定にする目的から、低反り性が求められます。また、製品の薄肉化を達成するには、成形時の薄肉流動性も必要となります。
「定着部の部品」の場合、定着方式に応じて超耐熱グレードのE5000シリーズから、他の特性重視のE6000HF、SV6000HFシリーズまで幅広く選択が可能です。蓄熱性、摺動特性が必要な場合には、低熱伝導率で表面平滑性の良いグレードとしてE5204LやE4205R、E6205Lを推奨いたします。
「定着部周辺の部品」の場合、薄肉流動性の観点からE6000HFやSV6000HFシリーズが適しています。その中でも低反り性、薄肉流動性の良いグレードとして、E6808LHFやSV6808THFを推奨します。
表6-5-1 スミカスーパーLCPのOA用途向けグレード
定着部の部品の種類 | 要求特性 | 推奨グレード |
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定着部の部品 | 標準 | E6808LHF、E6007LHF-MR、E6006L、E4006L、E5006L等* |
蓄熱性、摺動特性 | E6205L、E4205R、E5204L | |
定着部周辺の部品 | 低反り、高流動性 | E6000HF、SV6000HFシリーズ(E6808LHF, SV6808THF等) |
*荷重たわみ温度;E6808LHF: 274℃、E6007LHF-MR: 269℃、E6006L: 284℃、E4006L: 310℃、E5006L: 355℃