スミカスーパー LCPの寸法安定性

成形収縮率

スミカスーパーLCPは、流動方向(MD)と、流動方向と直角方向(TD)の成形収縮率の違いが大きく、異方性の大きい材料となります。金型の寸法を検討される場合は、MDとTDの値の中間値をベースに、修正が可能な成形収縮率を設定してください。特に薄肉小型製品の場合、MD方向の収縮率は0%として設計することを推奨します。

表3-3-1 スミカスーパーLCPの物性値の異方性

項目 単位 測定方向 E5008L E5008 E4008 E6008 E6006L E6007LHF SV6808THF SZ6505HF
成形収縮率 MD 0.05 0.06 0.10 0.18 0.19 0.20 0.25 0.22
TD 0.81 1.25 1.32 1.16 0.74 0.60 0.56 0.60
曲げ強度 MPa MD 137 130 138 136 156 160 120 145
MPa TD 58 56 57 61 92 70 50 77
曲げ弾性率 GPa MD 13.4 12.6 12.7 12.2 11.4 12.0 10.0 12.0
GPa TD 3.7 3.3 3.0 4.4 4.7 3.5 3.0 6.0
成形収縮率試験片 :64×64×3mm (1mmフィルムゲート)
曲げ物性試験片 :13w×3t×64Lmm
支点間距離 :40mm
射出成形機 :日精樹脂工業 PS40E5ASE

図3-3-1 E6008の成形収縮率

図3-3-1 E6008 の成形収縮率

図3-3-2 E5008の成形収縮率

図3-3-2 E5008 の成形収縮率

スミカスーパーLCPの線膨張係数

スミカスーパーLCPの優れた特長のひとつに、線膨張係数が極めて低いことがあります。スミカスーパーLCPの線膨張率は、温度が変化しても線膨張係数はほぼ変化せずに線形性を持ち、MD方向の線膨張率は、金属と同等レベルの極めて低い線膨張係数となります。ただし、LCPは他の特性と同様に、熱膨張係数に異方性が生じ、TD方向の線膨張係数は大きくなります。

図3-3-3 スミカスーパーLCPの線膨張係数と他樹脂との比較

図3-3-3 スミカスーパーLCPの線膨張係数と他樹脂との比較

線膨張係数

線膨張係数は、成形品の温度1℃あたりの熱膨張による変位量です。一般的に線膨張係数は、ある温度範囲の平均線膨張係数を指します。
スミカスーパーLCPの線膨張係数は、充填材の種類や充填量、流動配向(異方性)の影響により、MDとTDで値が大きく異なります。本測定では、比較的異方性が大きくなりやすいダンベル試験片の中央部から切削加工した試験片の線膨張係数を示しているため、MDとTDの差が明確となります。

表3-3-2 スミカスーパーLCPの線膨張係数

単位:10-5/℃
シリーズ グレード 線膨張係数
MD TD
E5000シリーズ E5006L 1.7 7.3
E5008 0.1 6.4
E5008L 0.2 6.0
E5204L 1.3 7.3
E4000シリーズ E4006L 0.2 8.1
E4008 1.4 6.2
E4009 1.5 6.3
E6000シリーズ E6006L 2.0 8.9
E6008 KE 0.3 7.2
E6008 1.3 5.6
E6809U 1.0 6.0
E6000HFシリーズ E6007LHF 0.2 8.5
E6007LHF-MR 0.2 8.5
E6807LHF 1.0 6.3
E6808GHF 0.7 7.6
E6808LHF 0.4 8.1
E6808UHF 1.0 6.2
E6810LHF 0.5 8.0
E6810KHF 0.9 7.1
SVシリーズ SV6808THF 0.6 5.2
SV6808GHF 1.3 6.8
SV6808L 1.0 9.0
SR1000シリーズ SR1009 0.2 7.1
SR1009L 0.2 7.1
SR1205L 1.1 5.6
SR2000シリーズ SR2506 0.7 5.2
SR2507 0.5 2.7
SZシリーズ SZ4506 0.1 5.9
SZ6505HF 1.1 7.6
SZ6506HF 1.0 6.6
SZ6709L 0.9 8.1

スミカスーパーの吸水性

スミカスーパーLCPの吸水率は0.02%と極めて小さい値を示します。また、水中で長時間放置しても重量変化、寸法変化はほとんどみられません。

図3-3-4 スミカスーパーE6008の吸水による重量、寸法の変化

図3-3-4 スミカスーパーE6008の吸水による重量、寸法の変化

スミカスーパーのPVT特性

スミカスーパーを含む熱可塑性樹脂は、固体や溶融状態に関わらず圧力に依存して比容積が変化します。この樹脂の圧縮性は、圧力(Pressure)、比容積(Specific Volume)および温度(Temperature)の関係(PVT特性)として表されます。一般的にPPSのような結晶性樹脂は、融点(結晶化)で大きな体積変化がみられますが、LCPは液晶化温度で見かけ上は溶けるため、固化に伴う体積変化は少なくなっています。また、圧力による体積変化も少なくなっています。そのため、寸法安定性に優れています。

図3-3-5 PPS-GF40%とスミカスーパーE6808LHFのPVT特性の比較

図3-3-5 PPS-GF40%とスミカスーパーE6808LHFのPVT特性の比較
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